• 2020.07.30

(第15話)介護の重要ポイント・その2「財布を握る」(後編)

【いま目の前にある危機】 ハハのアルコール依存症は、当初僕らが考えていたよりも深刻な問題をはらんでいた。 老人介護施設は、基本的に利用者が認知症を患っていることは前提条件に含まれている。だからどれだけ認知機能が衰えても、その程度に応じた何らかのサービスが受けられる。 ところが、そこにアルコール依存が絡むと話は変わってくる。 依存症の患者は酒を飲むためなら脱走でも何でもする。酔えば暴力的になるし、酒 […]

  • 2020.07.19

(第14話)介護の重要ポイント・その2「財布を握る」(前編)

【デイサービスで解決できたこと・出来なかったこと】 ハハが選んだ養護施設のデイサービスは、月曜日から金曜日までが稼働日だった。 本音の本音を言えば、行ける日はすべて(つまり週5日間)行って欲しかったが、もちろんハハがそれを受け入れるわけはなかったので、まずは当面の間、月・水・金の週3回からスタートしてみることになった。 「もし、今日は体調が悪いから行けないという場合はどうすればいいの?」 ケアマネ […]

  • 2020.07.10

(第13話)いざ、デイサービスへ。

【ケアマネージャーTさん登場】 要介護認定が済み、ランクが「要介護1」に確定したことで、ハハは国の支援を受けられる準備が整った。 僕らがハハをデイサービスに預けることで解決したいことは、主にふたつあった。 ひとつは、自分たちが仕事で家を空けている間に、ハハが酒を飲みに行ってしまうのを少しでも阻止すること。 そしてもうひとつが、かたくなに風呂に入ろうとしない状況をなんとかすることだ。 どちらも定期的 […]

  • 2020.06.25

(第12話)介護の重要ポイント・その1「時間をコントロールせよ」

【まず、デイサービスの利用を目指そう】 親の介護をする子が介護疲れを起こす構造は、サラリーマンが会社勤めで病んでしまうのととても似ている。 「介護(仕事)とは、多少きつくて当たり前。出来ないのは自分がうまくやれないせい」 そんな思い込みで我慢を重ね、自責の念でどんどん袋小路に追い込まれていってしまう。 しかし、どうしてもその仕事が嫌なら転職すればいいのと同じで、介護にも「どうしてもつらいなら自分で […]

  • 2020.06.18

(第11話)さっさと白旗を上げることの大切さ

【逃げ場がない】 ハハと暮らし始めて、あらためて痛感するようになった認知症の厄介なところは、主に2つあった。 1つ目は、何でもすぐに忘れてしまうこと。 認知症なんだから、ものを忘れるのは当たり前だろう?まあ、確かにそうなのだが。 食事をしたことを忘れるとか、いま言った話を忘れてまた同じ話をするとか、そういうのは別にいいのだ。むしろ、微笑ましいくらいですらある。 では、忘れることの何が問題なのか。そ […]

  • 2020.06.12

(第10話)何から手を付ければいいのか分からない

【嫁氏の受難が始まる】 2017年5月、僕たちは、ついに同居を始めた。住んでいたマンションも無事に売れてしまったので、もう逃げ帰るところはない。文字通り、背水の陣だ。 ハハとの同居開始と同時に、あらためて痛感したのは、気分の浮き沈みの激しさだ。とにかく、機嫌がいい時と悪いときの落差が大きい。しかも、機嫌が悪くなるきっかけがよく分からない。 嫁氏が「お義母さん、おはよう」と声をかけても、一瞥もくれず […]

  • 2020.06.08

(第9話)成年後見制度は本当に「使える」のか?

【ハハの財産をどうやって守るか】 認知症を発症した人がやってしまうことの一つに、「買い物に対するタガが外れる」という現象がある。思い立ったが吉日、何でも買ってしまうのだ。 よく聞くのは、テレビ通販を見たらすぐに電話してしまい、次から次に荷物が送られてくるので家族がたいへん困惑するというもの。 注文した本人の反応にもいくつか定番がある。例えば、腹筋トレーニングマシンのワンダーコアを1ヶ月のうちに3台 […]

  • 2020.05.29

(第8話)床下防虫業者との攻防

【叩くとホコリが止まらない】 慣れ親しんだマンションを出て実家に引っ越すにあたり、荷物の整理や移動の他にも、やらなければならない実務は色々あった。その一つが、固定電話の番号の一本化だ。 普通に考えれば、実家に入るのだから実家の番号に統一して、住所と電話番号が変わった旨を知人にハガキやメールで知らせればいい。 だが、そうするべきか悩む部分があった。理由は、ハハが数件の詐欺に遭っていたことだ。土地の押 […]

  • 2020.05.25

(第7話)お金が蒸発した!~同居に踏み切るまで~(後編)

【金払いが良すぎるハハ】 なぜ、流し台入れ替え工事の費用が二度見するほど高かったのか。理由は単純で、ハハが新しいシンクとして最も高級なモデルを選んでいたからだ。 事前の相談と言いつつ既に発注済になっていたのは、発注したことを本人が忘れていただけである。 嫁氏は上等なシンクなどカケラも望んでいなかったし、僕はハハの預金残高が足りるのかが気になって仕方がなかったので、せめてもう少しコスパの良いモデルに […]

  • 2020.05.17

(第6話)お金が蒸発した!~同居に踏み切るまで~(中編)

【ハハとお金】 ハハは、バブル前後の約15年間ほどの間に、幸運にも結構まとまったお金を蓄えることが出来た。と言っても、きちんとした目標や計画性があったわけではない。収入が急に増えたにもかかわらず、仕事が忙しすぎて使う暇がなかった結果、自然と貯まったものだ。 昭和一桁生まれのハハにとって、贅沢とは「高いものを食べる」「高い旅行に行く」「高いモノを買う」の三択だった。そういうお金の使い方をできる事がス […]